1990年2月14日、カール・セーガンは惑星探査を終え太陽系から離れつつあったボイジャー1号に、 地球を含む 太陽系の惑星すべての写真を撮ることを提案。のちに "Pale Blue Dot" と呼ばれることになるこの写真(左)では、 地球は淡く青い点にしか見えず、画質も悪いものだったが、天文学上もっとも重要な10大写真のひとつに選ばれることになる。 ※カール・セーガン (1938〜1996) 天文学者。NASAの惑星探査計画にたずさわったほか、地球外知性探査計画(SETI)の推進や一般向けの啓蒙書などで知られる。 アメリカ生まれ。 ※ボイジャー1号(Voyager 1)1977年9月5日に打ち上げらた太陽系の外部惑星や太陽系外の探査を目的とするNASA航空宇宙局の無人探査機。当初の任務は木星と土星の探査。
以下、カール・セーガン著「惑星へ」第1章 "YOU ARE HERE"からの引用
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この距離から見ると、地球はさして興味深い場所には見えない。しかし私たちにとっては違う。
この点(左写真)をよく見てほしい。あれがここだ、あれが故郷だ、あれが私たちだ。 すべての人がここに住んでいる、愛する人も、友人も、知人も、今までに存在したすべての人が、皆ここで人生を送っている。
喜びも悲しみも、威厳に満ちた幾多の宗教も、政治思想も、経済主義も。 狩人も、羊飼いも。すべての英雄も、臆病者も。文明の創造者も、文明の破壊者も。すべての国王も、農民も。 すべての愛し合う夫婦も、すべての母親と父親も、希望にあふれた子供も。 すべての発明者、そして探検家。道徳を語る教師も、腐敗した政治家も。すべてのスーパースターも、偉大な指導者も。すべての聖者も、罪人も。 人類の歴史上すべての人が、すべての種が、ここに住んでいる。太陽の光に照らされた塵にも等しいこの場所に。
地球はとても小さなステージだ、広大な宇宙の中では。 考えてみてほしい、すべての将軍や皇帝が、勝利と栄光の名のもとに流した血の海を、この点、その瞬くごく一部の、つかの間の支配者となるために。 考えてみてほしい、この点の片隅にいる住人が、別の片隅にいる、ほとんど見分けのつかない住人に対して、どれほど残虐な仕打ちをしてきたかを。 どれほど熱心に人は殺し合うことか、どれほど多くの誤解があることか、どれほど激しい憎しみがあることか。
私たちの傲慢な態度、自惚れ、自分たちは特別なのだという幻想を、この淡く青い点は教えてくれる。 私たちの惑星はこの漆黒の闇に包まれた、ひとかけらの孤独な泡にすぎない。 この広漠をした宇宙では私たちは名もない存在だ。他に助けてくれる人はいない、私たち自身をのぞいては。
地球は現在までに知られている生命を育む唯一の星だ。 少なくとも近い将来、他に人類が移住できるような場所は存在しない。 行くことはできるか?たぶん。住むことはできるか?いや、まだ。 好き嫌いにかかわらず、今のところ地球が私たちの住める唯一の場所だ。
天文学は、人を謙虚にし、身のほどをわからせる学問だという。 私たちのちっぽけな世界を遥か彼方から見たこの景色ほど 人間の思い上がりを示すのにふさわしい例もないだろう。
私たちにとってこの映像は私たちの責任を表しているように見える。 もっとお互いの気持ちになり、この淡く青い点を大切にするという責任を。 私たちの知っているただひとつの故郷を。
カール・セーガン
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